
「亡くなった叔父に借金があったようだ」
「疎遠だった伯母の相続人になったと通知が届いた」
相続の手続きにおいて、意外と見落とされがちで、かつ混乱を招きやすいのが「甥(おい)・姪(めい)」の立場です。自分が知らないうちに借金の相続人になっていたり、逆に相続放棄をしたつもりができていなかったりと、実務上トラブルが多いケースでもあります。
今回は、第3順位の相続人として重要となる「甥・姪」の相続放棄について、司法書士の視点から詳しく解説します。
目次

まず、なぜ親戚に過ぎない甥・姪が相続人になるのか、その仕組みを整理しましょう。
日本の民法では、相続人の優先順位が決まっています。
・第1順位:子(子が死亡していれば孫)
・第2順位:父母(父母が死亡していれば祖父母)
・第3順位:兄弟姉妹
叔父(伯父)や叔母(伯母)が亡くなった際、その方に子供がおらず、かつその両親も既に他界している場合、相続権は「兄弟姉妹」に移ります。そして、その兄弟姉妹(あなたの親)が既に亡くなっている場合、その権利を子供である「甥・姪」が引き継ぎます。これを「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」と呼びます。
この仕組みにより、何十年も会っていない親戚の借金を、ある日突然背負うリスクが発生するのです。

甥・姪が相続人になる場合、被相続人(亡くなった叔父・叔母)との交流が薄いことが多く、資産状況を正確に把握できていないケースが大半です。
・多額の借金や未払金がある場合(消費者金融、税金の滞納、未払いの入院費など)
・連帯保証人になっていた可能性がある場合
・管理の難しい不動産(山林や古い空き家など)しか遺産がない場合
・親族間の遺産争いに巻き込まれたくない場合

相続放棄には「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」という厳格な期限(熟慮期間)があります。
・叔父が亡くなった事実を知った日
・先順位(子や親)が全員相続放棄をしたことを知った日
・自分が代襲相続人であることを知った日
実務上、先順位の相続人が放棄した結果、後から自分に回ってくるケースでは、「自分に相続権が回ってきたことを知った日」から3ヶ月以内であれば受理されます。
ただし、時間が経過するほど「知った日」の証明が難しくなるため、通知が届いたらすぐに行動する必要があります。

「自分が放棄したら、自分の子供(被相続人から見て、又甥・又姪)に迷惑がかかるのでは?」と心配される方がいますが、安心してください。相続放棄をすると、最初から相続人ではなかったことになるため、自分の子へ相続権が移る(再代襲する)ことはありません。あなたが放棄すれば、その系統の相続はそこで止まります。
第3順位の相続では、相続人が「兄弟姉妹の子供たち」全員に及ぶため、人数が膨大(10人以上など)になることがよくあります。「自分だけ放棄すればいい」と考えがちですが、あなたが放棄すると、あなたの取り分は他の甥・姪に上乗せされます。親族間のトラブルを避けるためにも、可能であれば「自分は放棄する」という意思表示を共有しておくのがスムーズです。
「価値がないだろう」と思って叔父の形見分けを受けたり、残された預金を分けてもらったりすると、「単純承認」とみなされ、相続放棄ができなくなる恐れがあります。特に甥・姪の立場では、良かれと思って遺品整理を手伝ったことが裏目に出るケースがあるため、注意が必要です。

甥・姪の相続放棄は、配偶者や子の相続放棄に比べて難易度が高いのが特徴です。
甥・姪が相続人であることを証明するには、「亡くなった叔父の出生から死亡までの戸籍」「その両親の戸籍」「自分の親の戸籍」など、大量の書類が必要です。これをご自身ですべて集めるのは非常に時間がかかります。
先順位の放棄を知ってから慌てて準備をしても、戸籍収集に1ヶ月以上かかることもあります。司法書士なら職権で迅速に書類を取得し、期限内に申述書を作成できます。
もし3ヶ月を過ぎてしまった場合でも、個別の事情(疎遠だった理由など)を説明する「上申書」を添えることで、受理される可能性があります。これは専門的なノウハウが必要な分野です。
甥・姪という立場は、相続において「予期せぬリスク」を負いやすいポジションです。身に覚えのない督促状が届いたり、疎遠な親族から書類への押印を求められたりしたときは、一人で悩まずに専門家へ相談してください。
当事務所では、戸籍の収集から家庭裁判所への申述まで、すべての手続きを代行いたします。「自分は本当に相続人なのか?」という確認だけでも構いません。あなたの平穏な生活を守るために、司法書士が力になります。