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2025/12/08
相続
遺言書と異なる遺産分割協議は可能?全員の合意など4つの有効条件と注意点を司法書士が解説

亡くなった親族の遺言書が見つかったものの、

「内容が現在の状況と合わない」
「特定の相続人に偏りすぎていて納得できない」

と戸惑っていませんか?


「遺言書は絶対的なものだから、従うしかない」
と諦める必要はありません。


原則として遺言書の内容は最優先されますが、実は相続人全員の合意など、一定の条件を満たせば、遺言書とは異なる内容で遺産分割を行うことが可能です。


しかし、単に「みんなで話し合って決めた」というだけでは、法的に無効となってしまう落とし穴も存在します。特に、遺言執行者」が指定されている場合や、相続人以外への「受遺」が含まれている場合は、より慎重な手続きが不可欠です。


この記事では、遺言・相続の実務に精通した専門家が、以下のポイントを分かりやすく解説します。

・遺言書と異なる遺産分割が認められるための具体的条件
遺言執行者がいる場合の注意点と実務的解釈
・遺言が無効、あるいは納得できない場合の救済手段


「せっかくまとまった話し合いが、手続きミスで無効になる」

という事態を避け、家族全員が納得できる相続を実現するために、ぜひ最後までご確認ください。

1.遺言書がある場合の原則と例外

(1)原則:遺言の内容が最優先

民法は「遺言による処分は、遺産分割に優先する」(民法902条等)とするため、
遺言書が存在する場合、その内容に従って遺産を承継させるのが原則です。

(2)例外:相続人全員が合意すれば、遺言と異なる分割も可能

遺言の効力は強いものの、遺言が相続人に不利であっても、相続人全員の合意があれば遺言と異なる遺産分割も有効とされます(判例・通説)。

これは、

・遺言が相続人間の法定相続分を拘束するものではなく

・相続人の自由な財産処分・協議が尊重される
ためです。

2.遺言と異なる遺産分割をするための条件

遺言内容と異なる協議が有効になるためには、次の要件が不可欠です。

(1)相続人全員の同意が必要

・一人でも欠けると、遺産分割協議は無効です。

・遺産分割協議書には、相続人全員の署名(記名)、実印での押印が必要です。もちろん印鑑証明書も必須です。

(2)受遺者がいる場合は受遺者の同意が必要

相続人でない第三者が受遺者である場合、受遺者の権利を害する協議は受遺者の同意がなければ無効です。

(3)遺言執行者が指定されている場合、その同意が必要です。

遺言執行者は遺言の内容を実現する義務があります。

また、遺言執行者がいる場合、相続人は、「相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない(民法1013条)」とされています。

そのため、遺言執行者の同意が必要となります。ただし、相続人全員と受遺者が遺言と異なる遺産分割に合意している場合、遺言執行者は同意を拒めないというのが実務的解釈です。

(4)遺産分割が禁止されていないこと

遺言で遺産分割を禁止することができます(民法908条)。

この場合、相続開始から5年以内の期間を定めて遺言書に明記します。

ただし、相続人全員の合意があれば、この遺言による禁止を無視して分割することが可能です。

遺言に納得できない相続人がいる場合

遺言内容に不満があるだけでは無効にはできない

・「親の意思と違う気がする」
・「不公平だ」


といった理由だけでは、遺言は基本的に有効です。

◆救済手段①:遺留分侵害がある場合 → 遺留分侵害額請求

遺留分を侵害している場合は、遺留分侵害額請求(民法1046条)により、侵害された額の金銭支払を請求できます。

◆救済手段②:遺言を無効とする裁判

以下のような理由がある場合に限り、家庭裁判所に遺言無効確認の訴えを起こすことができます。

・遺言者に意思能力欠如があった
・強迫・詐欺
・方式違反(自筆でない、押印なし、日付なしなど)

◆救済手段③:遺言と異なる遺産分割協議を行う

まとめ:遺言書と異なる遺産分割は「全員の合意」と「手続きの正確さ」が鍵

本記事では、遺言書が存在する場合でも、相続人全員の合意など一定の条件を満たせば、異なる内容での遺産分割が可能であることを解説しました。

ポイントを振り返ります。

原則と例外: 遺言書が最優先だが、相続人全員の合意があれば変更できる。

必須条件: 相続人全員(および受遺者)の同意が必要。一人でも欠ければ無効。

注意点: 遺言執行者がいる場合は、その同意や権限確認が不可欠。

リスク: 誤った手順で協議書を作成すると、不動産登記や銀行手続きで受理されない可能性がある。

「家族みんなが納得しているから大丈夫」と思っていても、法律的に不備のある遺産分割協議書では、その後の名義変更手続き(登記や預貯金の解約)がストップしてしまうケースが後を絶ちません。


また、遺言書の内容を変えることで、贈与税や譲渡所得税といった予期せぬ税金が発生するリスクも潜んでいます。

「円満な解決」を目指したはずの話し合いが、手続きの不備で新たな火種にならないよう、遺言書と異なる遺産分割を行う際は、より慎重な判断と正確な書面作成が求められます。

【専門家からのアドバイス】

遺言書と異なる遺産分割は、法的な要件が非常に複雑です。

遺言執行者」の有無や「遺留分」の計算など、一つボタンを掛け違えると協議全体が無効になる恐れがあります。

「うちは家族仲が良いから大丈夫」と過信せず、合意形成の前に一度専門家のチェックを受けることを強くお勧めします。

その遺産分割協議、本当に法的に有効ですか?

遺言書作成・相続手続きのプロが、 あなたの家族にとって「後悔のない選択」をサポートします。

遺言執行者がいる場合の対応方法がわからない

・相続人全員の合意を取り付けたいが、進め方に不安がある

・作成した遺産分割協議書が、銀行や法務局で通るか確認したい

まずは「無料相談」で、現状の整理から始めませんか?

斉藤 恭生

司法書士・行政書士 斉藤 恭生(さいとう やすお)
斉藤司法書士事務所 代表

【ご挨拶】

司法書士という仕事は、ミスが許されないため常に緻密な確認が求められ、緊張する場面に立ち会うことも少なくありません。だからこそ日々の仕事を大切に、誠実に、そして常に新鮮な気持ちを持って取り組んでいます。 川口市を中心に、周辺地域の皆様とのコミュニケーションを大切にし、その信頼にお応えしたいと考えています。相続に関するお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。

【経歴】

  • 埼玉県立蕨高等学校 卒業
  • 法政大学法学部法律学科 卒業
  • 2001年 行政書士試験合格
  • 2002年 司法書士試験合格
  • 都内法律事務所内での開業を経て、2006年に父の事務所と合流し、川口市に事務所を移転。

【資格・所属】

  • 司法書士(埼玉司法書士会 登録番号 第1056号)
  • 簡裁訴訟代理関係業務認定(認定番号 第201041号)
  • 行政書士(埼玉行政書士会 登録番号 第02132747号)

斉藤司法書士事務所

〒332-0032 埼玉県川口市中青木2丁目22番3号
(川口簡易裁判所の横、川口登記所の前)

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